幕開け

寺田が、

ホテルグリーンコア土浦のオープニングスタッフとして
面接を受けにきたのは、

2009年の年末か、2010年の年明け早々だったと思う。

初対面の寺田は、思わず、

「日本の方ですか?」

と聞きたくなる、

妙に南国系の雰囲気を漂わせる笑顔と、
真っ黒で真っすぐな長い髪が印象に残る女性だった。

一緒に面接をしていた会長(兄)と、

「明るくて元気そうな人だね。いい感じだね。」

とすぐに採用を決めた。

出身は広島だが、ご主人の仕事の関係で、
茨城に越してきて、もう、何年も経っており、
広島での生活より茨城での生活のほうが長くなっていた。

寺田は小学校4年生からカッターを始め、
中学、高校とカッター一筋。

日本代表の合宿にも呼ばれる、
優秀な選手だったようだ。

そして、

高校卒業後は、そのまま自衛隊に入り、
男子隊員に交じり匍匐前進をしていたのだから、

そりゃあ、ふくらはぎが太いワケである(笑)

まぁ、とにかく、

絶対に負けたくないという勝気な性格は、

スポーツマン精神にのっとり、
アスリート時代と自衛隊時代に養成されたと思われるが、

もともと寺田は、

弟ばかりを可愛がるお母さんの気を引こうと、

幼稚園の頃からぬいぐるみを抱え、
家出を繰り返していたそうだ。

だから、

思い立ったら即行動の精神は幼稚園の頃からの筋金入り、

そう、職人級なのだ。





その職人級の技が、

自分を苦しめることになるとは、

寺田はもちろん、

そばにいた私にも、

なかなかわからないまま、

2017年の夏が終わる頃、

怒涛の試行錯誤編が幕を開けた。